漆と暮らす「urujyu」
工芸の生まれる暮らし
urujyuは漆作家清水愛が「漆のある暮らし」、「漆の技術」、「国産の漆」の三つの漆の文化を未来につなげたいと2015年立ち上げたブランドです。金継ぎを通じて漆の文化を広めるとともに、2020年から京都の美しい里山、美山町に移り住み、休耕地を活用した漆植林を始めました。
urujyuという名前には、一本の小さな漆の木がやがて大地に強く根を張る大樹になりますように、そして金継ぎでつながる人たちの集う止まり木になれますようにという思いがこめられています。
漆を植えて、漆を採取できるようになるまで10年以上の月日がかかります。そして、漆が成長した後も、漆が掻けるのは梅雨から秋の頃までです。多くの農作物と同じで、漆だけを育てるというのは仕事として成り立たないものです。自分で漆を育てる暮らしを始めて、どんな木や作物を一緒に育てたらよいだろう?一年の内、どんなサイクルでそれらを育てたら自然のサイクルと調和するだろう?どんな暮らし方をすれば、漆を育てながらの暮らしが可能になるだろう?そんな実験実験の日々の中で気づいたことは、漆を育てる暮らし方とは、そもそも、季節ごとの作物を育てながら、自然と共生して暮らす「里山の暮らし」そのものだったということ。「里山の暮らし」そのものが、漆を育てる暮らしの基盤だったということ。そして、それは漆だけでなく、日本のいろいろな工芸に共通することではないかなと思いました。
今、多くの地域で自然だけでなく、工芸の生まれる里山の暮らしが失われつつあるように思います。
金継ぎをはじめ、漆工芸に必要な材料は昔から自然の中にあるものでした。その一つ一つを改めて見れば、漆、砥の粉、砥草、弁柄、真綿、綿花、小麦、米、貝など今も暮らしの周りに身近にあるものです。それらを育て、自然から採取し、そして活かす「工芸の生まれる暮らし」を自分で作るなら、どういう暮らし方になるだろう?自らの問いの答えを探しながら過ごす実験の日々は、気づきと感動の連続です。
― workshopを通じて、urujyuの気づきと感動を共有して頂けたら幸いです -
金継ぎ教室 / 漆と暮らすworkshop
漆がつなぐ人と器と自然の循環
漆は暮らしの中で、接着剤や充填剤、塗料として使われてきました。漆の塗膜は、硬く、美しく、抗菌性も備えています。漆に似た性質のものを人が作ろうとすると、大きな工場を建て、幾種類もの化合物が必要になるでしょう。
漆はとてもシンプルです。木から採取し、それを使いものを作り、ものを直し、そして役割を終えた漆は、長い時間をかけて、太陽の力で自然分解され土に還ります。このシンプルでナチュラルな循環をurujyuはとても大切にしています。皆さんも、金継ぎを通じてこの循環の中にいる安心感を感じ頂けたら幸いです。
人も器もやがて命を全うし、土に還る存在です。だからこそ、思いゆくまで生ききりたい。漆はきっと、その望みを繋ぐ一つの光なのかもしれません。
メッセージ
愛が人を繋ぎ、傷ついた心を癒し、再び歩み出す希望をくれるものなら、漆は、金継ぎは、愛そのものだと思う。
20数年前、香川の高松市立美術館で人間国宝音丸耕堂先生の作品を見たときです。「この世にこんな美しいものがあったのか」と感動すると同時に、「どうやって作られているのか全くわかない」どうしても知りたいと思いました。この瞬間が私と漆の出会いです。それから漆の世界に入り、夢のように月日が経ちました。縄文時代から現在に至るまで、暮らしの中に活かされてきた漆と、それを活かす先人の知恵と技術に触れるとき、いつも気づきと感動がありました。漆の道を選んだからこそ出会えた人々、得られた経験。それらがいつも私に生きることを教えてくれました。「漆にありがとう、漆の全部にありがとう」その感謝を込めて、未来に漆の文化を繋ぎたい。これがurujyuの原点です。
清水愛